ナーチャリングとは?定義・種類・手段を体系的に解説 | リード育成の進め方と成功ポイント

はじめに
見込み客や既存顧客との信頼関係を、長い時間をかけて築き上げていく――。「ナーチャリング」という手法は、BtoB 企業を中心に、多くの組織で取り入れられています。
ただし、ナーチャリングの定義や種類、具体的な手段を体系的に理解しないまま運用を始めると、施策が場当たり的になって成果につながりにくくなります。
そこで本記事では、ナーチャリングの定義・種類・手段の3つの軸について、順を追って解説します。基本を押さえたうえで自社に合った手段を選び、適切な KPI で効果を測定する。本記事がその一助になれば幸いです。
ナーチャリングとは
「リードをたくさん集めたのに、なかなか商談につながらない」——BtoB マーケティングに取り組むなかで、思っていたより見込み客の動きが悪いと感じる方は少なくありません。
見込み客を集めてから、自社との関係をどう深めて商談へつなげていくか、その設計図を描けていないとこうした事態に陥りがちです。
そうならないために、この章ではナーチャリングの定義と、混同されやすい「リードジェネレーション」との違いを整理します。両者の役割分担を押さえ、施策全体を見渡す視点を育みましょう。
定義と基本概念
ナーチャリングとは、「育成」を意味する言葉です。マーケティングの文脈では、見込み客(リード)を育て、購買決定へと導くプロセス全体を指します。
その本質は、見込み客の検討段階に合った情報を、適切なタイミングで継続的に届け、自社への信頼を積み上げていくことにあります。畑に種をまいてから、水をまき肥料を足して雑草を抜いていくように、関係性の土壌を整えながら自社への愛着を高めていきます。
混同されやすい用語に「リードジェネレーション」があります。これは、コミュニケーションがとれる状態の見込み客を、新たに生み出すための活動です。
両者の違いは、担う段階にあります。リードジェネレーションが「見込み客を集める」入り口の段階だとすれば、ナーチャリングは「集めた見込み客との関係を深め、購買決定へ導く」その後の段階を受け持ちます。
ナーチャリングの必要性
買い手の購買行動は、近年大きく変わりました。インターネット上で製品情報やレビュー、比較記事を簡単に得られるようになり、見込み客は営業に接触する前から、自ら情報を集めて購買を検討するようになっています。
製品・サービスの選択肢が増えたことで比較はより慎重になり、検討期間も延びています。見込み客にとって最大の懸念は「選んで失敗すること」だからです。自社に最適なソリューションはどれか、導入後に期待どおりの効果が出るのか——その見極めに、時間をかけるようになっています。
とくに BtoB では、現場担当者・情報システム部門・決裁者など複数の関与者が意思決定に関わり、検討が数か月に及ぶことも珍しくありません。
つまり、1度の接触で製品・サービスが売れる時代ではなくなったのです。買い手が情報を自分で集めて長い時間をかけて選ぶようになった以上、売り手の関わり方も変わらざるをえません。見込み客と接点を持ち続け、検討の各段階で相手のニーズに合った情報を届けること――ナーチャリングの必要性が増してきているわけです。こうした変化に対応する施策の組み立て方は、成果を出すための手法と戦略の整理で体系的に解説しています。
【関連記事】BtoB ナーチャリングの手法とは?成果を出すマーケティング戦略を体系解説
ナーチャリングの目的とメリット
「とりあえず定期的にメールを送ってはいるが、何のためにやっているのか曖昧になってきた」——ナーチャリング施策が定着するほど、当初の目的が見えにくくなることもあります。
各施策の目的が定まらないままでは、効果の判断も改善もできません。この章では、ナーチャリングの目的を2つの軸で整理し、取り組むことで得られるメリットを確認します。
関係構築とリード育成の目的
ナーチャリングの目的は、主に「見込み客との接点を持ち続けること」と「購買意欲を醸成すること」の2つです。
前者は、記憶に残り続けるための活動です。意欲が高まるまで定期的に接点を保ち、必要になったときに真っ先に思い出してもらえる関係をつくります。
後者は、意欲そのものを育てます。課題解決につながる情報や関心を引くコンテンツを届け、「必要になったとき」を「今」に近づけていきます。
こうした活動を積み重ね、見込み客が自発的に購買を検討・決定する環境を整える。これがナーチャリングの最終的なゴールです。
導入で得られるメリット
ナーチャリングは、営業業務の効率化につながります。
購買意欲の高いリードを見極めてから営業部門に引き渡すことで、無駄なアプローチが減り、限られたリソースを優先度の高い見込み客に集中しやすくなります。
米国の調査会社 Forrester Research によると、ナーチャリングに優れた企業は、そうでない企業と比べて、販売準備の整ったリードを33%低いコストで、50%多く生み出すと報告されています(参照*1)。
同調査の数字の前提となる商習慣は、日本と異なる面もあります。それでもコミュニケーションの質を高めることが、売上の成長と効率的なマーケティングの両立につながるという方向性は、日本の BtoB マーケティングでも参考になります。
ナーチャリングの種類
「ナーチャリングといっても、結局メールを送るだけでしょう?」——そう捉えられがちですが、対象やチャネルなどによっていくつかの型に分けられます。自社の状況に合った型を選ぶには、まず全体像を知ることが近道です。
この章では、代表的なナーチャリングの種類を整理します。分け方には、「誰を対象とするか」という軸と「どのチャネルで実施するか」という軸があります。
リードナーチャリング
リードナーチャリングは、ナーチャリングのなかで最も一般的な形態です。
見込み客を段階的に育て、購買準備が整った状態(SQL:Sales Qualified Lead)へと導いていきます。検討段階に合わせて届けるコンテンツを最適化し、製品・サービスへの理解と信頼を深めてもらいます。
たとえば、認知段階では業界の基礎知識を、比較検討段階では導入事例や製品の詳細情報を届けるといった具合です。
果実が熟すのを待つように、段階に応じて関わり方を変えていきます。見込み客の関心を少しずつ高め、商談や受注へとつなげるのです。
カスタマーナーチャリング
ナーチャリングは、対象によってアプローチが変わります。前項のリードナーチャリングが見込み客向けだとすれば、カスタマーナーチャリングは既存顧客向けです。
カスタマーナーチャリングのゴールは、購買後のサポートや活用ノウハウの共有を通じて顧客満足度を高め、リピート購買や上位の製品・プランへの引き上げ(アップセル)につなげることです。
新規顧客の獲得には、認知づくりから商談まで多くの時間とコストがかかります。一方、すでに自社を知る既存顧客にリピートやアップセルを促すほうが、少ないコストで売上につなげやすいです。カスタマーナーチャリングが売上基盤の強化に欠かせないのは、このためです。なお、いったん離れてしまった顧客を呼び戻す進め方は、休眠顧客の掘り起こしと再アプローチの手順で具体的に解説しています。
【関連記事】休眠顧客の掘り起こしに効くナーチャリング施策とは?再アプローチの実務手順
ソーシャルナーチャリング
チャネルや手段に着目した分類の代表が、ソーシャルナーチャリングです。ソーシャルメディアを活用して顧客との関係を築き、強めていく手法です。LinkedIn や Facebook などのプラットフォームを通じて、ターゲット顧客と継続的に接点をつくっていきます。
このように、ナーチャリングは「誰を対象とするか」だけでなく「どのチャネルで実施するか」でも分類できます。
自社の顧客セグメントや業界の特性に応じて、複数の種類を組み合わせることで、さまざまな接点から関係を深められます。
ナーチャリングの代表的な手段
「ナーチャリングにメールなどの手段を使えることは知っているが、どれを自社で使えばいいのか分からない」——手段が多いほど、選択に迷うものです。それぞれの手段がどの検討段階に効くのかを押さえれば、組み合わせ方が見えてきます。この章では、メールやセミナー、ホワイトペーパーといったナーチャリングの代表的な手段を整理します。
メール
メールは、ナーチャリングの最も基本的な手段です。
見込み客全員への一斉配信から、相手の状態に合わせた個別配信まで、幅広く使えるのが強みです。なかでもナーチャリングで力を発揮するのが、興味・関心度や行動履歴にもとづいて内容を変える個別配信です。見込み客のニーズに近い情報を、最適なタイミングで届けられます。
大切なのは、技術よりも戦略です。あらかじめ決めたスケジュールで一律に送るだけでなく、相手の検討段階に応じて届ける中身を変えていく——この出し分けの発想が、メールを使ったナーチャリングの効果を一段階上へ引き上げます。実際の文面の組み立て方は、ナーチャリングメールの書き方と例文テンプレートで具体例とあわせて紹介しています。
【関連記事】ナーチャリングメールの書き方とは?開封率 UP につながる例文テンプレート付き
セミナー・ウェビナー
セミナーは、参加者の課題意識を引き出し、自社の製品・サービスへの興味・関心を高めるためのナーチャリング施策です。見込み客の関心や課題に合わせて開催すれば、接点の維持と購買意欲の醸成という2つの目的を同時に満たせます。
近年はオンラインセミナー、いわゆるウェビナーに参加しやすい環境が整いました。業界を問わず取り組みやすく、無料ウェビナーに参加したことがある層も増えてきました。対面と比べて地理的な制約や会場スペースの心配がなくなり、参加者の規模を広げやすい点もウェビナーならではの利点です。
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーは、見込み客の検討段階に沿った内容を届けられます。課題の解決方法やノウハウ、導入事例などをまとめた資料をダウンロード形式で提供することで、自社への興味・関心を高める効果が期待できます。
オウンドメディア
オウンドメディアは、ブログ記事や動画などの自社コンテンツを継続的に発信し、検索エンジンや SNS 経由で見込み客との接点を生み出す手段です。
ホワイトペーパーとオウンドメディアを組み合わせれば、認知段階から比較・検討段階まで、幅広いフェーズの見込み客に価値ある情報を届けられます。
リターゲティング広告
リターゲティング広告は、自社サイトを過去に訪れた見込み客に対し、別の Web サイトや SNS の閲覧中に自社広告を表示してもう1度呼び込む施策です。
自社サイトを離れた見込み客は日常業務に追われ、閲覧した内容を忘れてしまいがちです。再び思い出してもらう手段として、リターゲティング広告は有効です。
SNS
LinkedIn や Facebook などの SNS を活用し、ターゲット顧客と継続的にやり取りすることで関係を強めます。
ただし、日本国内では媒体ごとのユーザー層に偏りがある点に注意が必要です。たとえば LinkedIn の国内利用者は500万人を超えた一方、外資系・IT 系企業や経営層に利用が偏る傾向があります。ターゲット層が在籍しているかを事前に確認したうえで活用するのが現実的です。
インサイドセールス
ここまでの手段が「見込み客に情報を届けて関心を育てる」ものだとすれば、インサイドセールスは「育ったリードを引き継ぎ、商談へとつなぐ」役割を担います。
電話やオンライン商談を通じて、リードの温度感に応じて個別に対応します。デジタル施策で温まったリードをインサイドセールスがフォローアップすることで、商談化までの流れをスムーズに設計できます。
活用ツールと技術
「ツールを入れれば自動でうまくいく」と期待して導入したものの、使いこなせずに持て余す——ナーチャリングのツール選びでありがちな失敗パターンです。ツールはあくまで土台であり、目的に合ったものを選べるかどうかが成否を分けます。
この章では、MA ツールを中心に、CRM やメール配信ツールとの役割分担と連携の考え方を整理します。
MAツールの役割と選定基準
マーケティングオートメーション(MA:Marketing Automation)ツールは、メール配信にとどまらず、Web サイト上の行動履歴の把握やリードスコアリングなど、複数のマーケティング施策を自動化・効率化できるツールです。
たとえば国産 MA ツール「SATORI」は、名前のわかる見込み客だけでなく匿名の見込み客にも接点を生み出せます。Web サイト内の行動履歴から関心の高い見込み客を見つけ、アプローチすべき最適なタイミングを担当者に伝える機能を備えています(参照*2)。
自社の目的に合った機能を備えているか、操作画面が使いやすいか、導入後のサポート体制が整っているか。MA ツールを選ぶ際はこの3点を軸に検討すると、運用の定着につながりやすくなります。主要製品ごとの機能の違いは、MA ツールの機能比較と選び方で詳しく取り上げています。
【関連記事】MA ツールでナーチャリングを自動化する方法 | 設計・設定・運用を徹底解説
CRM・メール配信ツールとの連携
ナーチャリングで中心になるのは前節の MA ツールですが、単独で完結するわけではありません。実務では、CRM やメール配信ツールと組み合わせて使うのが一般的です。
CRM は、顧客情報を一元管理するツールです。MA で育てたリードの情報を CRM に引き継げば、商談から受注後のフォローまで、一貫した顧客対応ができます。
メール配信ツールは、その名のとおりメール配信に特化しています。メールマガジンの一斉配信など、メール施策が中心なら単体でも十分に機能します。
一方、MA ツールはメール配信を含む、より広い範囲の施策を担います。MA にとってメール配信は、数ある機能のひとつにすぎません。
つまり、メール中心ならメール配信ツール、Web サイトの行動データやスコアリングまで踏み込むなら MA と CRM の連携——自社がどこまでやりたいかで、選ぶツールの組み合わせが変わるわけです。
実践ステップと KPI 設定
「何から手をつければいいのか、順番が分からない」——いざナーチャリングを始めようとすると、最初の一歩で迷うものです。全体の流れを地図のように把握しておけば、ナーチャリングを進めるうえで次に何をすればよいか見えてきます。
この章では、ナーチャリングを進める6つの手順と、効果を測るための KPI の考え方を整理します。
6つの実施手順
ナーチャリングを実施する際は、次の6つのプロセスに沿って進めると、全体像を把握しやすくなります(参照*3)。
- ナーチャリングの目的を明確にする
- リード情報を一元管理する
- リードをセグメント(分類)する
- カスタマージャーニーを策定する
- 施策を実行する
- 効果を測定・改善する
まず、「商談数の増加」や「既存顧客のリピート促進」など、目的を設定します。
続いて、リード情報を CRM などに集約し、属性や行動履歴にもとづいて分類します。そのうえで、顧客が購買に至るまでの道筋(カスタマージャーニー)を描き、各段階で届けるコンテンツと手段を決めます。
ナーチャリング施策の実行後は効果を測定し、スコアリングも活用しながら、次に届ける情報を見直す――というのが一連の流れになります。獲得から商談化までの流れをフェーズごとに掘り下げた解説は、リード獲得から商談化までの育成フローをあわせてご覧ください。
【関連記事】リード育成のフロー全解説|獲得からナーチャリング・商談化までの3フェーズ
効果測定に用いる KPI
ナーチャリングの効果測定は、メールの開封率やクリック率といったエンゲージメント指標から始めると取り組みやすくなります。これらの数値が低ければ、メッセージの内容やタイミング、配信頻度を調整していきます。
リードをある段階から次の段階へ進めることが目的なら、ナーチャリングによって段階が進んだ人数と平均所要時間を追跡・測定します。
具体的な KPI の例を挙げていきます。ハウスリストに送るメールマガジン配信では CVR(コンバージョン率)を1%と仮定し、1,000件の配信あたり10件のコンバージョンを目標として設定します。セミナー開催では、1回あたり40〜80件の申し込み数を KPI に設定するといった手法もあるでしょう。
ただし、これらの数値はあくまで一例です。適切な目標値は、商材の単価や検討期間、リードの母数によって変わります。自社の過去実績を起点に設定するのが現実的です。
最終的なゴールは商談や受注ですが、その成果が出るまでには時間がかかります。ナーチャリングがうまく進んでいるかは、それまでの途中段階の指標で測ることになります。だからこそ、施策ごとに測定ポイントを設けることが欠かせません。
おわりに
ナーチャリングは、見込み客や既存顧客との信頼関係を段階的に深め、購買意欲を自然な形で高めていくプロセスです。
定義を正しく理解し、リードナーチャリングやカスタマーナーチャリングといった種類を把握したうえで、メール・セミナー・ホワイトペーパーなどの手段を組み合わせる。これがナーチャリングで成果を上げる近道となります。
自社の課題や顧客の検討段階に合った手段を選び、スコアリングや KPI で効果を可視化しながら改善を重ねれば、ナーチャリングの精度は着実に高まっていきます。実際に成果が出た取り組みから学びたい場合は、成約率を高めた事例と失敗からの改善策が参考になります。
まずは目的の明確化とリード情報の一元管理から着手しましょう。小さく始めて、徐々に施策の幅を広げていくことをおすすめします。
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