リードナーチャリング

BtoB ナーチャリングの手法とは?成果を出すマーケティング戦略を体系解説

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はじめに

BtoB の購買では、複数の部門や担当者が関わりながら長期間にわたって検討が進みます。そのため、見込み客との関係を段階的に深める「ナーチャリング」が、マーケティング戦略の土台になります。

ナーチャリングを体系的に設計しなければ、せっかく獲得したリードが検討途中で離脱してしまい、商談につながらないまま埋もれる恐れがあります。

こうした機会損失を防ぐには、購買プロセスの各段階に合った施策を組み合わせ、マーケティングと営業が連携して見込み客を支援する仕組みが欠かせません。

本記事では、BtoB ナーチャリングの定義から、バイヤージャーニーに沿った施策設計、主要手法、ABM の統合、MA ツールの活用、営業連携の設計まで、マーケティング戦略を体系的に解説します。

BtoB ナーチャリングの定義と前提

「ナーチャリングが大事なのはわかるが、自社の購買実態にどう結びつくのかが見えない」――BtoB マーケティングに携わるなかで、こうした感覚を持つ方は少なくありません。背景には、BtoB 特有の購買プロセスを理解できていない、という課題を抱えているケースもあります。

ナーチャリングの基礎知識を体系的に押さえたうえで読み進めると、本記事の内容も立体的につかめます。本記事では、ナーチャリングの土台となる BtoB 購買の特殊性と、解決する2つの課題を整理します。

BtoB 購買プロセスの特殊性

BtoB の購買は、個人の買い物とは大きく異なり、組織内で多くの関係者が段階を踏んで意思決定を行います。米国 Forrester の調査では、1件の購買に平均13人が関与し、89%の購買が2つ以上の部門をまたいで行われています(参照*1)。

この検討期間の長さと関与者の多さが BtoB 購買プロセスの特徴です。この前提を理解したうえでマーケティング戦略を設計しなければ、途中離脱を防ぐ施策は的外れになりかねません。

ナーチャリングが解決する課題

製品やサービスの選択肢が増えた環境では、顧客が慎重に比較し、検討期間が長期化しています。こうしたなかで買い手が最も恐れるのは、誤った選択をして社内で「失敗」と見なされることです。

実際、米国の調査・コンサルティング企業 Gartner が2024年に実施した調査では、テクノロジー製品の購買において、買い手の8割近くが直近の購買を後悔していると報告されています(参照*2)。

裏を返せば、買い手が「役立つ」と感じる情報を届けて購買後の後悔を減らすことが、製品・サービスの提供企業に求められています。Gartner の別の調査では、提供企業から得た情報を役立つと感じた買い手は、後悔の少ない購買に至る確率が約3倍高いと報告されています(参照*3)。

ナーチャリングは、継続的に有用な情報を届けることで、こうした不安を段階的にやわらげる役割を果たします。畑を耕してから種をまくように、すぐに刈り取りを狙うのではなく、関係を一段ずつ育てる発想が根底にあります。

検討の各段階で適切な情報が届かなければ、見込み客は競合に流れるか、そもそも購買自体を棚上げしてしまいます。ナーチャリングのマーケティング戦略は、こうした「検討途中の離脱」と「意思決定の先送り」という2つの課題に正面から対処する取り組みです。

バイヤージャーニーと施策設計

「コンテンツは用意しているのに、なぜか商談につながらない」――そんな手応えのなさを感じたことはないでしょうか。多くの場合、買い手が今どの検討段階にいるかを踏まえず、同じ情報を一律に届けてしまっていることが原因です。

この章では、買い手の検討プロセスを「認知・比較・決定」の3段階で捉え、段階ごとに届けるべきコンテンツの設計方針を整理します。

認知・比較・決定の3段階

BtoB のバイヤージャーニー、つまり買い手が購買に至るまでの道筋は、大きく3つの段階に分かれます。

第1段階の「認知」では、買い手が自社の課題やニーズに気づき、解決策を探し始めます。

第2段階の「比較検討」では、候補となる製品やサービスを調査し、選択肢を絞り込みます。

第3段階の「決定」では、要件や予算に最も合う製品・サービスを選びます。

マーケティング戦略を立てる際は、この3段階それぞれで見込み客が求める情報が異なることを前提に、届けるコンテンツや接点の設計を変える必要があります。

段階別コンテンツの使い分け

各段階に適したコンテンツの種類は明確に分かれます。

認知段階では、課題の理解を助けるブログ記事やインフォグラフィックが有効です。製品を直接売り込むのではなく、教育や気づきに焦点を当てます。

比較検討の段階では、ホワイトペーパーや比較ガイドを通じて、自社の解決策が他の選択肢と比べてどのように優れているかを説明します(参照*4)。

決定段階では、実際の顧客事例やウェビナーが効果的です。たとえば、導入担当者が30日以内に導入を完了した経緯を語るウェビナーや事例紹介が、決定を後押しするコンテンツとして挙げられています。

このように、バイヤージャーニーの段階ごとにコンテンツの役割を切り替えることが、BtoB ナーチャリングのマーケティング戦略において基本的な設計方針となります。

主要手法と施策の体系

「打てる施策は一通り知っているが、どれをどう組み合わせればよいのかが見えない」――ナーチャリングの現場では、手段の取捨選択に迷う場面が少なくありません。施策を単発で捉え、購買プロセス全体のなかでの役割を整理できていないことが背景にあります。

この章では、コンテンツマーケティング、展示会・ウェビナー、メールという主要手法を、それぞれが効く段階とともに体系的に整理します。

コンテンツマーケティングの実践

コンテンツマーケティングは、BtoB ナーチャリングの中核を担う手法です。その効果は、認知から購買後までの幅広い段階に及びます。

北米を中心とする BtoB マーケター約980名を対象とした調査では、過去1年でコンテンツマーケティングが「ブランド認知の向上」に役立ったとの回答が87%、「需要・リードの創出」が74%にのぼりました(参照*5)。

さらに「リードの育成」に役立ったとの回答が62%、「既存顧客とのロイヤルティ向上」が52%、「売上・収益の創出」が49%と、検討の入口から受注後の関係維持まで、各段階で成果が報告されています。

つまりコンテンツマーケティングは、認知獲得、リード育成、売上貢献のいずれにも寄与するナーチャリングの背骨となる手法だといえます。

展示会・ウェビナーのフォロー設計

展示会やウェビナーは、認知から比較検討の段階にある見込み客と、直接接点を持てる手法です。

展示会は BtoB マーケティングにおいて、依然として大きな投資対象です。米国では2023年に展示会への投資が前年比70%増と拡大したと報告されており、関心の高さがうかがえます(参照*6)。

展示会で獲得したリードに対しては、個別のメールや電話でフォローを行い、顧客関係管理(CRM:Customer Relationship Management)システムを使って接触履歴と進捗を追跡することが効率的なフォローアップにつながるとされています。

一方、ウェビナーはオンラインで参加できる環境が整ったことで、業種や業界を問わず取り組みやすい手法になっています。対面の開催と比べて地理的な制約がなくなるため、参加者の規模を広げやすいという利点があります。

展示会とウェビナーのいずれも、イベント当日だけで完結させず、事後のフォロー設計をマーケティング戦略に組み込むことがナーチャリングの成果を左右します。

メール・ステップメール施策

メールは、見込み客と1対1の接点を継続的に保てる手法です。届ける内容とタイミングを相手の検討段階に応じて送り分けられる点が、メールならではの強みです。

こうした段階別の配信を自動化したものがステップメールです。あらかじめ設定したシナリオに沿って、リードの状態に応じたメールを順番に届けます。

これにより、手作業では追いきれない規模のリードに対しても、一貫した接点を途切れさせずに維持します。メール施策は単発で終わらせず、バイヤージャーニーの流れに沿った連続的な設計にすることで、商談化への橋渡し役として機能します。

ABM とナーチャリングの統合

「リードは集まるが、本当に取りたい企業に届いている実感がない」――量を追ううちに、こうした手応えの薄さに直面することはないでしょうか。広く集める発想だけでは、価値の高い企業への深いアプローチが後回しになりがちです。

この章では、狙った企業に深く関わる ABM と、幅広くリードを育てるナーチャリングをどう統合するかを整理します。

ABM の基本と3つの型

アカウント・ベースド・マーケティング(ABM:Account-Based Marketing)とは、価値の高いターゲット企業を特定し、その購買チームに対して個別に最適化されたコンテンツやコミュニケーションを届けるマーケティング戦略です。ABM には3つの型があります。

1つ目の「1対1」は、個別の企業ごとに高度にカスタマイズしたアプローチを行う方法です。

2つ目の「1対少数」は、似たニーズを持つ数社から十数社程度のグループに対して軽度なカスタマイズを施す方法です。

3つ目の「1対多数」は、マーケティングオートメーション(MA:Marketing Automation)ツールを活用してより多くの企業へ効率的にアプローチする方法です。

広く網を打つように見込み客を集めるアプローチとは対照的に、ABM は狙いを定めた大物に銛を向けるように、限られた対象へ深く関わります。そのためナーチャリングと組み合わせれば、見込み客ごとの検討状況に合わせた精度の高い施策を実行しやすくなります。

デマンドジェネレーションとの併用

ABM は特定のターゲット企業に集中する戦略であるのに対し、デマンドジェネレーション(需要創出)はより広い範囲のリードを獲得・育成する取り組みです。ABM では個別の企業ニーズに合わせたメッセージを届けることで顧客体験が向上し、高い転換率や投資対効果(ROI:Return on Investment)の向上につながります。

ABM の企業単位でのスコアリングやレポート機能を備えた MA ツールを使えば、ターゲット企業ごとにコンテンツを配信し、成果をアカウント単位で可視化します。ABM で重点企業を深く育成しつつ、デマンドジェネレーションで幅広いリードを集めるという二軸のマーケティング戦略を採ることで、短期の商談化と中長期のパイプライン構築を同時に進められます。

MA ツールとリードスコアリング

「ツールは導入したが、どのリードから営業に渡すべきか、結局は勘で決めている」――MA ツールを使い始めた現場では、こうした優先順位づけのあいまいさがよく聞かれます。スコアリングの設計思想が定まらないまま運用を始めてしまうと、こうした事態を招きやすいです。

この章では、MA ツールの選び方と、リードスコアリングモデルを設計する手順を整理します。

MA ツールの選定と活用法

MA ツールは、メール配信だけでなく、Web サイト上の行動履歴の把握やリードスコアリングなど、複数のマーケティング施策を自動化・効率化できるツールです。

MA ツールの中には、人口統計情報や行動データ、エンゲージメント指標に基づいてカスタマイズ可能なリードスコアリングモデルを備え、BtoB の長い商談プロセスや ABM に対応した製品もあります。MA ツールを選定する際は、自社のナーチャリング設計に必要な機能を洗い出し、商談プロセスの複雑さやリードの規模に合った製品を比較検討することがポイントです。

スコアリングモデルの設計手順

リードスコアリングとは、見込み客ごとに数値を付与し、成約の可能性に応じて優先順位をつける仕組みです。設計の手順としては、まず顧客になるための最低限の条件を定め、次にターゲット市場が通常備えている特徴を特定します。

その後、理想的な顧客像の特徴を明確にし、最後に追跡すべき行動を設定します(参照*7)。

BtoB のスコアリングモデルでは、リードの行動と属性の両方が予測精度に大きく影響します。ある研究では、モデルの予測に大きく寄与した上位の特徴として「リードの流入元」「状態変化の理由」「リード分類」が挙げられ、続いて「製品」「反応回数」「アカウント種別」「関心度」が続いたと報告されています(参照*8)。

スコアリングモデルは1度作って終わりではなく、実際の商談化データと照合しながら定期的にスコアの重みづけを見直すことで精度を高められます。

 

営業連携と失敗回避の要点

「せっかく育てたリードが、営業に渡したとたんに放置される」――マーケティングと営業の境目では、こうした引き継ぎの断絶が起こりがちです。両部門がリードの状態を同じ目線で把握する仕組みがないことが、機会損失を生んでいます。

この章では、マーケティングと営業をつなぐ設計と、ナーチャリングでありがちな失敗の回避策を整理します。

マーケティングと営業の接続設計

ナーチャリングで育てたリードを商談につなげるには、マーケティングと営業の間でリードの状態やエンゲージメント履歴、次に取るべきアクションを双方が把握できる仕組みが必要です。両部門がリード情報を共有し、可視化することで、ナーチャリングの成果を営業活動へ接続します。

BtoB の買い手は、自社と自社のニーズに対する深い理解を提供企業に求めています。ある調査では、購買決定に影響を与えた要因として「自社と自社ニーズへの深い理解」が72%、「ソリューション領域とビジネス環境への深い知識」が72%、「ROI の証明や社内稟議を助けるコンテンツ」が67%という結果が出ています(参照*9)。

マーケティングがナーチャリングを通じて蓄積した顧客理解を営業に引き継ぐことが、こうした買い手の期待に応える前提となります。

よくある失敗パターンと対策

BtoB ナーチャリングでありがちな失敗の1つは、製品の機能を前面に出して顧客の課題には触れていないメッセージを設計してしまうことです。機能中心の訴求は、買い手の共感を得る前に売り込みと受け取られ、効果を発揮しにくいとされています(参照*4)。

もう1つの典型的な失敗は、コンテンツを1度公開しただけで放置することです。ブログ記事を SNS 用コンテンツに転用したり、ウェビナーをガイドに再編集するなどの再活用が推奨されています。

施策全体を開封率や転換率、パイプラインの進行速度といった指標で継続的に計測し、改善を重ねることがナーチャリングの精度を維持する基盤となります。

おわりに

BtoB ナーチャリングのマーケティング戦略は、購買プロセスの長期化と関与者の多さという構造的な特徴に対応するために、バイヤージャーニーの段階ごとに施策を設計し、コンテンツマーケティング、展示会・ウェビナーのフォロー、メール施策、ABM、MA ツールを組み合わせて運用する取り組みです。

成果を出すために押さえるべきポイントは、段階に合ったコンテンツの使い分け、スコアリングモデルによるリードの優先順位づけ、そしてマーケティングと営業の情報共有の運用ルールです。これらの要素を自社の状況に照らし合わせながら定期的に見直すことで、BtoB ナーチャリングの精度を維持しやすくなります。

ナーチャリングの全体像や手段ごとの使い分けについてさらに理解を深めたい方は、「ナーチャリングとは?定義・種類・手段を体系的に解説」もあわせてご覧ください。

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