Vol.6 — Japan Entry FAQsチームが本当に知りたいことと、実際に効くこと
ENJINスタッフ執筆
- 2026年 2月 27日 -

本シリーズの最終回では、テクノロジーアナリストのMarc Einstein氏に、海外B2Bチームから最も多く寄せられる質問と、日本で信頼を築き、勢いを加速し、案件を前に進めるために一貫して効果的な実践行動について語ってもらいました。
Marcの考えはシンプルです。「すべての会社に当てはまる“Japan Playbook”は存在しない」。今や日本には2人のスタートアップから10億ドル企業まで参入しており、何が効くかは業界・セグメント・運営モデルによって異なります。だからこそFAQ形式が有効――現場が本当に詰まるポイントに答えることができるからです。
▼Contents
- 「なぜFAQ?」――日本市場に万能な戦略はないから
- 「控えめに約束し、期待以上に応える」はスローガンではなく運用規律
- 稟議で意思決定が止まる場合、どう進める?
- 「書面で約束」とは、全員が精査できる資料を作ること
- 信頼回復の最速ルートは「すぐに問題を表に出す」こと
- タイムゾーン:「金曜まで」は本当の締切ではない
- 「食品サンプル」アナロジー:見せたものと同じものを納品する
- ローカライズの優先順位:顧客に「何が大事か」引っ張ってもらう
- 契約・価格・支払いの落とし穴
- 勢いを生むのは「アンカー顧客」――リスク感を一気に下げる
- 実績のパッケージング:ネガティブ広告は避け、許可を得て使いやすく
- 「インサイドマーケティング」:再度“売り込まなくても”アカウントが広がる
- 壁に貼るべき唯一のルール
- もっと深く知りたい方へ
「控えめに約束し、期待以上に応える」はスローガンではなく運用規律
―なぜ「控えめに約束し、期待以上に応える」が日本で効果的なのですか?
Marc Einstein氏:
精度が敬意を示すからです。日本では納期・フォーマット・「言ったことを正確にやる」が基本です。アンケートで50問約束して49問しか出せなければ、それだけで信頼問題になります――他国なら些細でも。
逆に、約束通りやりきった上で、気の利いた“おまけ”を加えると強いです。50問やりきって「1問追加しました、理由はこうです」と伝えれば、顧客は喜びます。単なる実行でなく、「顧客のために考えている」ことが伝わるからです。
―日本で効く「控えめな約束」の言い回し例は?
Marc Einstein氏:
交渉にせず小さなボーナスを加えることです。たとえば「あなたは大切なお客様なので」「日本で最初の顧客なのでこのパッケージを追加します」など。日本の顧客は予算が決まっていることが多いので、値引き交渉より「制約内でしっかりサポートされている」と感じてもらう工夫が大切です。
稟議で意思決定が止まる場合、どう進める?
―日本では稟議などの社内承認で意思決定が止まりやすいと言われます。そういうとき、外資企業は信頼を損なわずに、どう前に進めればいいでしょうか?
Marc Einstein氏:
日本の意思決定は、より合意形成ベースで、しかも階層性もあるので、ひとりの担当者がその場で「Yes/No」を即断することは少ないです。だから、会議が「決定の場」だと思わないほうがいい。会議は、社内の議論に持ち帰るための“材料を集める場”なんです。
そこで一番効くのは、相手が社内に持ち帰りやすい形で情報を整えることです。具体的には、打ち合わせ直後に、短い書面で要点を送る。提案内容、何をどこまで提供するのか、納期や進め方、次に相手側にお願いしたいアクション――これを明確にします。資料が曖昧だと社内で回せず、プロセスが止まりやすい。逆に、明確で精度が高いと、社内の議論が「解釈」ではなく「事実」に基づいて進むので、前に進みやすくなります。

契約・価格・支払いの落とし穴
―日本では価格・契約条件・支払い条件で揉めやすいと言われます。外資企業が詰まりやすいポイントと、その対策は何でしょう?
Marc Einstein氏:
まず揉めやすいのは、「顧客が買うと思っているもの」と「こちらが提供するもの」のズレです。提案が抽象的で、スコープ・成果物・前提が書き切れていないと、不確実性が増えて承認が止まります。
次に価格は、強い値引き交渉というより「固定予算」の壁で止まりがちです。割引勝負より、予算内で成立するパッケージ設計(必要なら小さな追加価値で納得感を作る)のほうが前に進みます。
最後に、請求書形式・ベンダー登録・承認フローなど調達の現実が“詰まりポイント”になります。だから早めに「何が必要か」を聞いて、そのプロセスに合わせる——これが遅延と不信感を避ける一番の対策です。
「インサイドマーケティング」:再度“売り込まなくても”アカウントが広がる
―インサイドマーケティングはアップセルやアカウント拡大とどう違う?
Marc Einstein氏:
日本の大企業は社内に多くのグループがあります。一つの部署が製品を気に入り、細部まで丁寧・納期厳守・期待超えを続けると、部門長がリーダー会議で言及し、自然に他部署へ紹介が広がります。
これが私の「秘密兵器」の一つです。社内推薦で一社内でビジネスが爆発的に広がり、時には日本から海外本社に伝播することもあります。
―社内紹介を依頼するベストタイミングは?
Marc Einstein氏:
タイミングが重要です。納品後、顧客が満足している時――多くは契約更新時や、ビジネスディナー・飲み会のような関係性が深まる場面。信頼ができてから、夜の終盤に依頼することが多いです。








