Vol.1 — Go or No-Go?市場調査と日本市場参入の決定要因

- 2025年 12月 23日 - 

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Marc Einstein氏は、日本市場で15年以上の経験を持つテクノロジーアナリスト。グローバルコンサルティングファームや日本の大手IT調査会社での戦略的役割を経て、国内外の企業と深く協業してきたことで、インサイダーとアウトサイダー両方の視点を持っています。本シリーズでは、3回にわたって変化する日本市場で外国企業が成功するための本質に迫ります。

インサイダーとアウトサイダーの視点

― まず、現在に至るまでのあなたのキャリアについてお聞かせください。
 Marc Einstein氏
私は約15年前にシンガポールから東京に移り、アメリカのコンサルティング会社で働き始めました。その後、日本のゲーム会社で戦略部門の役割を担い、純粋な国内環境に身を置くという貴重な経験を得ました。最も決定的だったのは、日本の大手国内IT調査会社に初めての、そして唯一の外国人社員として入社し、7年間在籍したことです。この多様な背景、特に国内企業での経験は、外国企業が日本をどう見ているか、そして何よりも日本企業がどのように購買と戦略的意思決定を行っているかについて、深い洞察を得ることを可能にしました。

外資受容への大きなシフトとスタートアップ文化の変化

―この10年間で、日本のビジネス環境で最も大きく変わった点は何でしょうか?
Marc Einstein氏
私が来日した15年前は、スタートアップに就職する新卒がいれば、社長が親に説明しに行くような時代でした。今ではSakana AIのようなユニコーンも登場し、スタートアップが当たり前になりました。また、以前は「富士通や日立、NECが作るものを買う」というのが常識でしたが、今は日本企業も海外企業と積極的に協業し、外部のテクノロジーを取り入れるようになっています。これは外資系企業にとって大きな追い風です。

コロナ禍がもたらした文化的変化

―コロナ禍は日本のビジネス文化にどんな影響を与えましたか?
Marc Einstein氏:
コロナ以前から「リモートワーク」や「ワークライフバランス」は議論されていましたが、実際に普及したのはコロナ以降です。2週間で全国的にリモートワークが導入され、「技術の問題」ではなく「文化の問題」だったことが明らかになりました。今では大手IT企業でもハイブリッド勤務が定着し、ビジネス文化が柔軟になったと感じます。

日本企業の実験精神とスタートアップ・スカウティング

―日本企業はより実験的になったと感じますか?
Marc Einstein氏:
はい。最近は「スタートアップ・スカウティング」の依頼が増えています。10年前はなかった仕事ですが、今ではIoTやAIなど海外のスタートアップを探してほしいという依頼が多いです。日本企業が世界の動向により関心を持つようになった証拠だと思います。

ローカライゼーションの本質と現場のリアル

―ローカライゼーションの壁について、現場で感じることを教えてください
Marc Einstein氏:
日本のローカライゼーションは「翻訳」だけではありません。例えば、アメリカ人の同僚が「Believe」とだけ書かれたスライドを持ってきても、日本では通用しません。日本の顧客はデータや根拠を重視し、資料も細かく作り込む必要があります。最近は生成AI翻訳などで技術的な壁は下がっていますが、「日本の顧客が安心できるか」「現地でサポートできるか」が本質です。

日本参入の「Go or No-Go」判断と現実

―「Go or No-Go」の判断で重要なことはありますか?
Marc Einstein氏:
日本参入には大きな投資と時間が必要です。十分なリサーチをせずに参入して失敗する企業も多いです。日本独自の商習慣や意思決定プロセスを理解し、「小さく始めて、徐々に改善(カイゼン)」するのが成功の鍵です。日本では直線的な成長よりも、最初はゆっくり、ある時点から一気に伸びる「ホッケースティック型」の成長パターンが多いです。

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パートナー選びと現地ネットワークの重要性

―成功事例やパートナー選びのポイントは何でしょう?
Marc Einstein氏:
例えばスロバキアのESETは、日本参入時にキヤノンをパートナーに選び、SMB市場で大きくシェアを獲得しました。Netflixも日本のリモコンメーカーと組んで成功しました。自社だけで全てをやろうとせず、現地の信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。また、パートナー選びでは「有名企業」だけでなく、幅広い業種・規模の企業に目を向けるべきです。

失敗パターンとHQとのギャップ

―逆に失敗するパターンにはどういうものがありますか?
Marc Einstein氏:
本社と日本法人の間で「売上目標」や「成長スピード」への認識ギャップがよくあります。日本は世界一営業サイクルが長い市場の一つで、ブランド認知がないと1年以上かかることも珍しくありません。現地の営業サイクルや意思決定プロセスを理解し、HQにも現実的な期待値を持ってもらうことが大切です。

信頼構築と日本流の「約束を守る」文化

―日本の顧客との信頼構築で大切なことはありますか?
Marc Einstein氏:
日本では「言ったことを必ず守る」ことが信頼の基盤です。例えば「50ページのレポート」と約束したら、49ページではなく50ページで納品する。納期も1分でも遅れてはいけません。逆に「アンダープロミス・オーバーデリバー(控えめに約束し、期待以上を提供)」ができれば、長期的な関係につながります。

ローカルプレゼンスとウェブサイトの重要性

―現地拠点やウェブサイトの運用についてアドバイスは?
Marc Einstein氏:
現地にオフィスやスタッフがいることは、顧客にとって大きな安心材料です。また、日本語ウェブサイトも重要ですが、ただ翻訳するだけでなく、定期的な更新や日本独自の情報(アクセス方法、電話番号など)を載せることが信頼につながります。

HR・法務・労務の落とし穴

―HRや法務面での注意点はありますか?
Marc Einstein氏:
日本の労働法や雇用慣習は海外と大きく異なります。例えば、アメリカのように簡単に解雇できません。現地の専門家やパートナーと連携し、法令順守や労務管理を徹底することが不可欠です。

スタートアップへのアドバイス

―スタートアップが日本で成功するためのポイントは何でしょう?
Marc Einstein氏:
スタートアップコミュニティや業界団体、各国大使館のイベントなど、現地コミュニティに積極的に参加することが重要です。ネットワーク作りが成功の鍵になります。

資料ダウンロード

日本市場参入の「Go or No-Go」を見極めるための実践的なガイドや、運用品質・ローカライズ・パートナー戦略の詳細については、Marc Einstein氏監修のホワイトペーパー
「Go or No-Go―日本市場参入のテストマーケティングと意思決定」で詳しく解説しています。

・市場の根本的な変化と最新トレンド
・日本独自の運用品質・ローカライズの本質
・パートナー戦略とグローバル展開への活用
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日本市場での成功するための実践的なノウハウをお届けします。ぜひWPをダウンロードください。

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