Vol.4 — 信頼で採用し、スケールするMarc Einsteinが語る
「日本で最初の採用を成功させる秘訣」

ENJINスタッフ執筆
- 2026年 2月 27日 - 

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Marc Einstein氏は、10年以上にわたり日本でグローバル企業と仕事をしてきた経験豊富なテクノロジーアナリストです。彼が日本進出企業に一貫して伝えている警告は、「最初の採用は想像以上に重要」ということ。本インタビューでは、日本の採用ダイナミクスがなぜ構造的に異なるのか、そして市場参入を静かに頓挫させる初期の失敗をどう避けるべきかを解説します。

最初の採用は「構造的な意思決定」

― なぜ日本では最初の採用が他国より重要なのですか?
 Marc Einstein氏
日本での採用は、他国以上にレバレッジが大きいと思います。労働環境が違うからです。日本の労働法は海外リーダーが慣れているものよりも労働者寄りで、海外企業が「自国と同じ感覚」で採用を進めて初期ミスをする例をよく見ます。日本オフィスをゼロから作る場合、最初の人は単なる職務を埋めるだけではありません。オフィスの運営スタイル、現地での会社の見え方、HQとのコミュニケーションの流れまで決定づけます

最も多い「最初の採用ミス」パターン

―よく見る「間違った最初の採用」のパターンは?
Marc Einstein氏
一番多いのは、期待値のミスマッチ――特にタイミングです。HQは「1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目で成果が出る」と期待しがちですが、日本の営業サイクルは長く、信頼構築と実績証明に時間がかかります。だから私は「1年目、2年目、3年目」で考えるように勧めています。最初にそのタイムラインを合わせないと、日本側はプレッシャーを感じ、HQは不安になり、両者がイライラする――戦略が本来の力を発揮する前にそうなってしまうこともあります。

「信頼で採用」は「人当たりの良さ」ではない

―「Hire for trust, then scale」と言っていますが、日本の採用において“信頼”とは何ですか?
Marc Einstein氏:
“信頼”とひとことで言っても、採用における“信頼”は、顧客からの“信頼”とは似て異なるものです。たとえば、採用において具体的に私が言う“信頼”とは、「感じが良い人」や「面接が上手な人」ではありません。社内の信頼――HQがその人に日本事業を任せて良い判断をしてくれるか、常に細かく管理しなくても大丈夫か、そして日本側リーダーがHQに明確さとサポートを求められるか――が重要です。

日本では階層も実務的に重要です。年齢を早めに聞かれることもありますが、それは社会的・職業的な位置づけを素早く把握するため。米国では失礼に感じるかもしれませんが、日本では期待値や上下関係を理解するための一部です。だから私にとっての信頼は、こうしたダイナミクスを冷静かつ効果的に乗りこなし、ビジネスを前に進められる力です。

面接で見極める「信頼のシグナル」

―日本で面接する際、どんな「信頼のシグナル」を重視しますか?
Marc Einstein氏:
本気の質問をたくさんする人を探します――それは「採用されたい」だけでなく「オーナーとして考えている」証拠です。優秀な候補者は、事業や製品、日本で会社が何を目指しているかに強い関心を持っています。すでに社員だったら聞くような質問――チームの働き方、成功の定義、制約、意思決定の流れ、どんなサポートがあるか――をしてくる。その好奇心と前向きな姿勢が、私にとって大きな信頼のシグナルです。

日本の採用が難しい理由:ジョブモビリティの現実

―  日本の採用が特に難しいと言われる理由は?法的・文化的な要因は?
Marc Einstein氏:
日本ではまだ一つの職場に長くいる傾向があります。変化しつつありますが、シリコンバレーなどと比べると流動性は低い。そのため、優秀な人材を動かすには時間がかかり、魅力的なストーリーが必要です。
もう一つはバイリンガル人材。英語で業務ができ、かつ日本で商業的に成功できる人は非常に需要が高く、競争も激しいです。
さらに、実務的な見極めポイントもあります。数ヶ月ごとに転職している人は、日本ではほぼNGです。米国では普通でも、日本では珍しく、適性やパフォーマンスに問題がある可能性があります。

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「うまくいかなかったら、すぐ解雇」はできない

― 日本の解雇リスクについて、海外リーダーが誤解しがちな点は?
Marc Einstein氏:
海外の人が「ダメならすぐ解雇すればいい」と言う場面を何度も見ましたが、日本側は「何を言ってるんだ?」となります。日本ではそんなに簡単ではありません。実際には「うまくいかないので、いくらか払うから辞めてくれませんか?」という交渉になることが多いです。それで解決することもあります。
私が見てきた目安は「在籍1年につき1ヶ月分の給与」、最低でも3ヶ月分くらいが一般的です。これで解決しない場合は裁判になることも。勝てると思っても、プロセスに時間と注意が取られ、スタートアップには大きな負担です。

採用前にリスクを減らす方法

―採用段階で創業者がやるべきことは?
Marc Einstein氏:
まずは現地の現実を知ることです。 多くの海外企業(特に小規模)はHRがシンガポールや韓国、米国にあり、日本で何をすべきか分かっていません。日本で専任HRを雇う余裕がなくても、現地の労務弁護士と1時間話すだけで安く済みます。基本を教えてもらい、就業規則を正しく整えましょう。次に、相互期待値を明確にすること(特に営業職)。 KPIや活動期待値――アウトリーチのやり方、報告の仕方、「良い」の定義――を明文化しましょう。後でパフォーマンスが問題になった時、証拠が重要です。最後に、試用期間を活用することです。 形式的にせず、実行力・コミュニケーション・フォローアップなど「適性を検証する期間」として使いましょう。「頭が良さそう」だけで終わらせないことです。

日本の初期営業は「関係構築型」

― 日本の初期営業は“ハンター型”ではないと主張していますが、企業は何を重視すべき?
Marc Einstein氏:
日本では特に初期は人間関係が重要です。20年知っているキーパーソンがいれば、商談獲得は劇的に楽になります。ただし、裏付けが必要です。「富士通やトヨタや日立を知っている」と言うだけではダメです。

私が勧めるのは、具体的にリストアップしてもらうこと。誰を、どんな文脈で、どれだけ最近まで知っているか。そして試用期間中に本当に商談を取れているか、進捗を確認します。
もし大手との関係がまだなくても、それだけでNGではありませんが、「どうやって関係を作るのか」を直球で聞きます。その答えの質が重要です。

創業者も現場に顔を出すべき

―なぜ創業者や経営陣が初期採用に関与することが重要なのですか?
Marc Einstein氏:
日本は今でも世界有数の経済大国です。創業者や経営陣が訪問すれば意味があります。対面は他国以上に重要で、顧客やパートナーへの本気度、チームへのコミットメントを示せます。
社内的にも効果があります。創業者が製品哲学を伝え、トレーニングを加速し、誤解を早期に減らせます。同時に、シリコンバレー流がそのまま日本に通用するとは限らないので、現地のフィードバック――特に顧客の購買行動や期待――を柔軟に受け入れる姿勢が必要です。

「まあまあ」は“警報”のことも

―採用後、HQと日本チーム間でよく起こるコミュニケーションギャップは?
Marc Einstein氏:
日本ではネガティブなフィードバックを直接言わないことが多いです。新しい採用者がかなりパフォーマンスが悪いのに、日本側が米国の創業者に「まあまあです」と伝えるケースを見たことがあります。創業者は「まあまあ=問題なし」と受け取りますが、実際は全然違います。
だからHQは“シグナルの読み方”を学ぶ必要があります。丁寧さが深刻さを隠すことも。ニュアンスを理解できないと、問題が遅れて表面化し、最も修正が難しいタイミングで発覚します。

「翻訳担当が一人」にならないために

― 初期にバイリンガル一人に頼りすぎるのを避けるには?
Marc Einstein氏:
テクノロジーツールを標準装備にしましょう。今はPowerPointで日英同時通訳が無料でできます。プロの通訳ほど完璧ではありませんが、驚くほど使えます。私も会議で日本語が話せても、全員が理解できるように必ず使っています。
10年前は通訳者を雇って1日で300万円かかりましたが、今は無料ソフトです。世界は変わりました。コミュニケーションの壁は完全には消えませんが、既存ツールを使えば大幅に下げられます。

次のステップへ

より深く知りたい方は、Marc Einstein監修のホワイトペーパー
「日本で『最初の一人』から“組織に合う人材”を見極める採用戦略」――でご覧いただけます。

内容例:

•日本で「信頼で採用」とは何か、面接でどう見極めるか
•重要な3つの役割(そして組み合わせが重要な理由)
•解雇リスクの現実(採用前にどう減らすか)
•外資系が誤解しがちな雇用形態と期待値
•HQと日本間のコミュニケーションギャップ(フィードバック層の修正方法)
•最初の採用判断・試用期間・初期チーム設計の実践チェックリスト

日本で成功するための実践ノウハウをぜひご活用ください。

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