展示会は、 BtoBマーケティングにおいて依然として重要な施策の一つです。一方で、「どの展示会を選ぶべきか」「いつ・どのように準備すれば成果につながるのか」が曖昧なまま、前年踏襲で出展を決めてしまっている企業も少なくありません。
リアル回帰やハイブリッド開催の定着、来場者の情報収集行動の変化により、出展計画の立て方そのものが成果を左右する状況になっています。
本記事では、変化した BtoB展示会の最新トレンドを整理したうえで、出展計画の立て方・展示会の選定ポイント・主催企業やメディア施策を活用した集客設計・出展前後に取り組むべき具体的アクションを取り上げます。
変化したBtoB展示会の最新トレンド
BtoB展示会は、企業のマーケティング施策において依然として重要な位置を占めています。2020〜2022年の行動制限期にはオンライン展示会が普及しましたが、制限緩和後の2023年以降はリアル開催の価値が再評価され、ハイブリッド型イベントやデジタル技術の活用が拡大しています。
ここでは、出展計画を見直すうえで重要な3つの観点から最新のトレンドを整理します。
リアル回帰とハイブリッド開催の定着
制限緩和後にオフライン展示会の回復傾向が続く中、リアルイベントならではの「発見」や「非言語コミュニケーション」といった体験価値が改めて注目されています。
株式会社才流の「展示会出展の実態調査 2024」でも、多くの企業が「オフライン展示会を同程度または積極的に活用したい」と回答しており、リアル開催への関心が維持されていることが示されています(参照*1)。
加えて、展示内容の一部をオンライン化するハイブリッド形式も定着しており、リアルの強みとオンラインの効率性を組み合わせた施策が増えています。今後の出展では「リアルかオンラインか」ではなく、両者をどう組み合わせて体験価値を設計するかが判断の軸になります。
「名刺獲得枚数」から「商談の質」へのKPIシフト
従来は「名刺獲得枚数」が主要な成果指標とされてきました。しかし、見込み客を案件化し受注につなげるためには、来場者の関心度や検討ステージを把握し、会期後の進捗を継続的に管理できているかどうかが成否を左右します。
株式会社 ITコミュニケーションズ「 BtoBマーケティングにおけるイベント施策に関する実態調査2025」によると、昨年度に実施されたマーケティング施策の上位3つは展示会(52.3%)・メールマーケティング(37.1%)・オンラインセミナー(36.7%)でした。展示会は「リード獲得(56.5%)」と「認知度向上(55.6%)」の両面で活用されていることが示されています (参照*2)。
こうした状況を踏まえ、名刺枚数に加えて「商談化率」「有効商談数」「成約率」を KPIに組み込む企業が増えています。展示会を「単発のリード獲得施策」ではなく「商談創出プロセスの起点」として再定義し、事後のフォロー施策と一体で設計する動きが広がっています。名刺情報を CRM(顧客関係管理)に登録し、商談化・受注までを一貫して管理できる体制が、成果を左右します。
2026年に注目すべき業界動向とテーマ
日本の MICE市場は2023年に約35億ドル、2024年には約37.25億ドルと拡大しており、2035年には90.3億ドルへの成長が見込まれています(参照*3)。この拡大の背景には、ハイブリッドイベントの定着と持続可能性への関心の高まりがあります。
自治体による誘致施策や官民連携も進展しており、海外来場者の増加を見据えた受け入れ体制の整備が進んでいます。加えて、 AIや XR(クロスリアリティ)といった先端技術が展示会体験そのものを変えつつあります。自動化された接客端末・行動データの可視化・リアルタイム翻訳などの導入により、来場者体験の高度化とグローバル対応の効率化が同時に進むと見込まれています。
こうした環境変化を踏まえると、2026年の展示会では「何を出すか」だけでなく「どの体験を設計するか」「どのようなストーリーで伝えるか」という事前設計の精度が、出展成果を左右する段階に入っています。その前提に立つと、2026 年の展示会で注目すべきテーマは、次の 3 つです。
その前提に立つと、2026 年の展示会で注目すべきテーマは、次の 3 つです。
- 環境配慮型のブース・運営設計
- 先端技術( AI・ XR)の体験への適用
- リアルなつながりを深める独自体験の設計
これらは展示会が「設計力と運用力によって成果が明確に分かれる場」へと変化していることを示しています。
成果を出すための出展計画・スケジュールの組み立て方
前章で述べたとおり、BtoB展示会では「出展すること」自体よりも、事前設計の精度が成果を左右します。目標設定から集客・当日の接点づくり・商談化までを一連のプロセスとして設計することが大前提です。
ここでは、展示会を成果につなげるために、出展計画を3つのステップに分けて整理します。
STEP1:出展目的の明確化とターゲット設定
最初に取り組むべきは、「なぜこの展示会に出展するのか」を明確にすることです。認知度向上なのか、新規リード獲得なのか、既存顧客との関係強化なのか。目的を具体的に言語化することが出発点になります。
目的が曖昧なままでは、集客施策やブース演出の方向性が定まらず、部門間の連携も取りにくくなります。リード獲得を最優先するのか、商談化までを目指すのか。どの指標で成果を測るのかを事前に定義し、営業・マーケティング・マネジメント層を含めて認識を揃えておくことが欠かせません。
ターゲットとなる来場者像の設定も不可欠です。 BtoB展示会では業種や職種ごとのターゲティングが一般的です。製造業なら生産管理担当者、 IT業界であればシステム導入担当者など、具体的に想定することで施策設計が精緻になり、会期後のフォロー内容にも一貫性が生まれます。
STEP2:予算配分(ブース装飾・集客・運営費)
出展を決めたら、総予算を整理します。出展ブース費だけでなく、装飾費・人件費・プロモーション費を含め、展示会前後の施策まで視野に入れて算出することが前提です。
見落とされやすいのが、会期前の集客費用です。事前告知・広告配信・メール施策・商談予約フォームの設置など、来場前の接点づくりは成果を大きく左右します。あわせて、主催者が提供する集客支援メニュー(公式サイトでの露出やメールマガジン掲載など)も確認しておくと、追加施策の選択肢が広がります。
大規模展示会では来場者数が想定を上回る場合もあります。当日のスタッフ増員やノベルティ・配布資料の追加手配といった変動要素も織り込んだシミュレーションを行い、想定外のコストや機会損失を防ぐ段取りを整えておきます。
STEP3:社内体制の構築と事後フォロー計画
展示会で成果を出すには、準備段階から社内体制を明確にし、役割分担を整理しておくことが欠かせません。会期中はブース運営・商談対応・ SNS発信・来場者データの管理など、多くの業務が同時に発生します。事前に担当範囲を定義し、スムーズに連携できる体制を整えておきます。
受注の可否は会期後のフォローの質とスピードに大きく左右されます。名刺やヒアリング内容を迅速にデータ化して一元管理できる体制を構築することで、タイムリーなお礼メールや次のアクションにつなげやすくなります。優先度の高いリードには会期後5日以内にフォローコールを実施し、それ以外のリードにはオンラインセミナー案内や資料提供などのナーチャリング施策を段階的に行う——こうした優先順位に基づくアプローチが、展示会フォローの主流になっています(参照*4)。
イベント&広告企画リストの活用:主催企業とメディア連携
展示会への出展効果を高めるには、主催企業や業界メディアが提供する広告企画などを活用することが有効です。
ここでは、主催企業やメディアとの連携に焦点を当て、2026年の出展計画と集客のポイントを整理します。
主要展示会主催企業の2026年開催スケジュール
一般社団法人日本展示会協会の調査によると、2026年の主要展示会の開催予定は東京ビッグサイトが296件(全体の約49%)と最も多く、幕張メッセ・インテックス大阪がそれに続きます。都市別では東京都・千葉市・大阪市・名古屋市・福岡市が上位を占めています(参照*5)。
BtoB向け展示会は毎年500件以上が開催されており、2026年も多くの展示会が計画されています。株式会社電通の推計によれば、「イベント・展示・映像ほか」領域の広告費は伸長傾向にあり、リアルイベントが広告市場を下支えする構図は継続すると予測されています(参照*6)。
こうした状況を踏まえ、出展を検討する際には主催企業が公表する来場者属性情報や実施テーマを事前に把握し、自社の戦略と照らし合わせることが欠かせません。できるだけ早期に出展する展示会を選定し、公式サイトやイベントパンフレットに自社名・ロゴを掲載することで、潜在顧客への告知効果を高めやすくなります。
今後の展示会出展をご検討されているご担当者様へ
猿人では、これから開催/掲載されるイベントおよび広告企画を業界別にまとめたコンテンツを無料で提供しています。
自社が注力するターゲットやソリューションが変わると、それに見合うイベントの再選定が必要となり、適切な施策の選定をするための情報収集に時間を取られているのではないかと思います。お手元に置いていただき、ターゲットとする属性や業界に合わせた施策実行にぜひご活用ください。
潜在層を「テーマ」で惹きつけ、ブースへ誘導する
米国の調査・コンサルティング企業 Gartner(ガートナー)の調査では、 BtoB購買者の75%が担当者を介さない購買体験を好んでおり、多くの時間をオンラインでの情報収集に充てていることが示されています(参照*7)。国内の調査でも、決裁者の84%が「営業担当者と接触する前」に選定の決め手となる情報にリーチしているというデータがあります(参照*8)。
こうした状況に対して、展示会当日にブースで初めて接点を持つだけでは十分とはいえません。来場者が事前に情報収集を行っている段階で、信頼できるビジネス・Tech系メディアを通じて、自社を「有力な解決策の候補」として認知させておくことが、出展効果を高める鍵になります。
具体的な手法として、展示会の開催時期に合わせて出展テーマ(製造業における AI活用など)に関連したタイアップ記事を出稿することが挙げられます。記事を通じて「業界の課題」と「解決の方向性」を示し、その具体的な解決策を確認できる場として展示会ブースへ誘導します。課題意識を持った来場者を呼び込むことで、ブースでの商談の質を高めやすくなります。
展示会×デジタル広告で接触頻度を高める手法
メディア活用に加え、 展示会の準備段階からデジタル広告を展開し、来場前に関心を高めておくことも有効です。メールマガジン・ SNS広告・業界ニュースサイトのバナーなどを活用し、出展情報や見どころを継続的に発信します。
電通「2024年 日本の広告費」によると、屋外広告や交通広告を含むイベント関連広告費は2023年に続き2024年も伸長しており、リアルとオンラインを組み合わせたマルチチャネル戦略が主流となっていることが示されています(参照*6)。
加えて、リンクストラテジー株式会社「 BtoB展示会動向調査レポート」によると、「来場決定の最大要因は主催者からの告知である」という結果も示されています(参照*9)。 自社施策と並行して、主催者の告知メニューを積極的に活用することも判断材料になります。
出展効果を最大化するための事前・事後アクション
どれほど魅力的なブースを用意しても、会期前後のアクションが不十分であれば、最終的な成果は限定的になります。来場者を的確に呼び込み、会場を訪れた見込み客との関係を深めるには、事前の告知と事後のナーチャリングが不可欠です。
ここでは、展示会効果を最大化するために押さえておきたい、2つの時間軸での対策を解説します。
会期前の集客:ハウスリストへの案内とLP制作
展示会前の集客施策として有効なのが、自社で保有する顧客リストや見込み客リスト(ハウスリスト)の活用です。メールや DM を通じて、出展内容やブースで実施するデモ展示などの情報を事前に告知します。
主催者の出展社一覧とは別に自社専用のランディングページ( LP)を用意し、ブースの見どころ・ステージ情報・事前商談の申込フォームなどを設置することで、来場意欲の向上につなげやすくなります(参照*9)。 SNSでの情報発信と組み合わせてオンラインとオフラインを統合的に展開することで、出展内容を事前に理解してもらう機会が増えます。
会期前の情報発信を徹底することで、展示会当日の商談やプレゼンの質を高めやすくなります。準備の工数は増えますが、その分だけ来場者の理解度と期待値を高めることができます。
会期後のナーチャリング:ホットリードを見逃さないスピード対応
展示会終了後は、名刺情報のデータ化・参加者へのお礼メール送付・追加資料の提供・フォローコールを迅速に行うことが求められます。お礼メールはできるだけ早く送付し、参加者の記憶が鮮明なうちに自社製品やサービスを再認知してもらう機会をつくります(参照*4)。
フォローコールの実施や、 MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用した開封履歴・行動履歴の確認により、ホットリードを早期に見極めることが商談獲得につながります。直近で導入を検討している層は来場者全体のごく一部に過ぎないため、即時対応できる体制が整っていなければ貴重な商談機会を逃すリスクがあります。
CRMなどのシステムを通じて部署間で見込み顧客の情報を共有し、検討度合いの高いリードから優先的に対応することで、中長期的な成約につなげる流れが定着しています。展示会後数か月から半年にわたって継続的なナーチャリング活動を行うことで、展示会の ROI(投資対効果)が向上したという事例も報告されています。
おわりに:早期の計画立案が2026年の飛躍を決める
本記事では、 BtoB展示会の最新トレンドと、出展計画を検討するうえで押さえておきたいポイントを整理しました。デジタル化が進む中でも、対面コミュニケーションの価値は維持されており、設計力と運用力によって成果が明確に分かれる場へと展示会は変化しています。
出展計画を早期に固めておくことが、来期以降のビジネス成長を大きく左右するでしょう。
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