日本エントリーのプロフェッショナル原沢に訊く、日本市場参入成功のセオリーVol. 2 - 最初の一社は赤字になっても成功させろ
- 2025年 11月 11日 -

ファーストユーザーはなぜ、そんなに大切なのか?
このインタビューでは3回に分けて、日本エントリーのプロフェッショナル、原沢滋に他では聞くことのできない日本市場の貴重な話を聞いている。前回は日本市場参入にあたっては「誰と組むか?」が成否を左右するという話だった。第2回目のテーマは、「最初の一社」。彼はなぜ、最初の一社にこだわるのか?
― 今日は、日本市場参入における「最初の一社」、いわゆるファーストユーザーの重要性についてお話をうかがいます。
原沢:重要性ということで言えば、もし、ファーストユーザーで失敗したら、もう日本でビジネスやっていけないというくらい重要です。最初のユーザーに「ここの、使えないんだよね」って言われた時点で、もう終わりです。
― 重要というか、それはもう、絶対に成功させろということですね。
原沢:ええ、本当にそうです。絶対に成功させなければならない。まず、一つ目のユーザーを獲得する前に、自分でそのお客さんがこうやりたいっていうことに関しては、「できるな」という確証を持つこと。そして、必ず最初の契約書には、「マーケティング活動に協力してください」「ディスカウントしますので、ホワイトペーパーに掲載させてください」「事例利用させてください」「プレスリリースとして出してください」といったところで握っておく。
― なるほど。成功させるだけでなく、事例として広げていけるかどうかも重要なわけですね。
原沢:そうです。これは当たり前すぎるかもしれませんが、実はビジネスにこだわってしまい、あまりそこを考えずにファーストユーザーを取得してしまうケースが多くあります。ファーストユーザーを成功させて、そのユーザーが事例という形で、プレスリリースを出す、またはユースケースとして講演に登壇してもらったり、事例取材に出てもらうという部分がすごく大事です。だから、これらの事例協力については契約書に必ず入れるようにしておきたいですね。
― 成功しても、周りに広がらなければ意味がないですしね。
PoCを無償で行ってはいけない理由
原沢:だから、ファーストユーザーを成功させるというのは、お金じゃなくて、事例として成功させるという意味です。もっと言ってしまえば、収支的には赤字になっても成功させるという覚悟が必要です。

― 事例として成功させるために、何か気をつけておきたいことはありますか?
原沢:無償でPoCをやらないこと、ですね。新規の参入だと、誰も知らない製品である場合が多くあります。なのでまずは使って貰いたい、と言うのがありますが、そこで一つ気をつけなくてはいけないのはPoCは必ず有償で行う。と言うことです。ターゲットをしっかり決めて、お金をもらって、そのターゲットに対して「イエスか、ノーか」っていうところまでもっていく。そういうプランをしっかり立てておかないと、無償のPOCを沢山実施するPOC地獄に陥ります
― たしかに、ユーザー側も、無償と有償では意識が違いますよね。
原沢:全然違いますね。私は社内に説明する時によく、1円でもいいからお金を取りなさいと言っています。企業にとってお金を払ってPOCを実施するというのは、会社のプロジェクトとして誰かの承認があって始まるものです。これがもし無償だったりすると、担当者が面白そうだからやります。で始まってしまう場合があります。ただ、触ってみないとわからない、という部分もありますので、僕はまずハンズオンセミナーを行います。これは、3時間の長さでオフィスに来てもらって、そこでテストデータを使ってシステムを体験してもらいます。で、「自社の実データでやりたい」と言われたらそこからは有償です、という流れに持っていきます。
― ハンズオンセミナーから誘導するわけですね。
原沢:やはり、会社のプロジェクトとしてPoCを扱うこと。そこに人とプロをちゃんとつけますという姿勢がお互いにとって重要になると思いますね。無償でやると、ダラダラと続いていっこうに話が進まないということにもなりかねませんから。
Vol. 3に続く
資料ダウンロード
原沢が「赤字にしても絶対に成功させろ」と語る、最初の一社はどのようにして成功させるのか。
原沢理論をさらに掘り下げ、体系化し、ドキュメントペーパーにまとめました。
「日本市場ではじめの一社を獲得する―「スモールスタート」実践ガイド」では、
・スモールスタートの原則
・ファーストユーザー成功の具体的な戦略
・PoCの正しい進め方
・効果的なマーケティングと獲得チャネル
・実務チェックリストと失敗パターン
といったテーマごとに、多くのエントリの経験で培われた実践的なノウハウをお届けします。

