Vol.2 — なぜ日本では「信頼」がビジネスの起点になるのかローカリゼーションとパートナー戦略

- 2026年 3月 25日 - 

河南敏氏


Vol.1では、日本市場参入の最初のフェーズとして市場創造(Market Creation)を紹介しました。市場理解が進んだとしても、それだけで事業が拡大するとは限りません。日本企業が新しいベンダーを採用する際には、「信頼」が重要な判断要素となります。Vol.2では、日本市場における信頼形成の構造について整理します。

ローカリゼーションの本質

― 日本市場ではローカリゼーションが重要だと言われますが、どのように理解するべきでしょうか

河南氏:
日本市場におけるローカリゼーションは、単なる翻訳ではなく顧客体験全体を市場に適合させることを意味します。多くの企業はUIやドキュメントの日本語化を進めますが、それだけでは十分とは言えません。日本企業が製品導入を検討する際には、契約条件、サポート体制、導入プロセス、セキュリティ対応なども重要な評価項目になります。顧客が安心して導入できる環境を整えることが、日本市場におけるローカリゼーションの本質と言えます。

例えば、契約書類における準拠法や管轄裁判所を日本に適用できるよう、本社の法務部門と調整したり、日本の名刺文化によるCRMのデータ構造へのマルチ言語対応をオペレーション部門や製品部門と協力して対処するなど、小さなニーズへの対応も広義のローカリゼーションだと考えるようになりました。

なぜ日本では信頼が重要なのか

― 日本市場では、なぜ信頼がそれほど重要なのでしょうか。

河南氏:
日本企業では、新しいテクノロジーを導入する際にベンダーの信頼性を慎重に評価する傾向があります。特に企業システムの場合、一度導入すると長期的な利用になるケースが多いため、製品機能だけでなく企業の継続性やサポート体制なども重要な判断材料になります。また、顧客は単に「どの企業が導入しているか」だけでなく、導入によってどのような業務改善や成果が得られたのかを重視します。そのため顧客視点のユースケースを示すことが信頼形成において重要です。

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市場認知の作り方

― 日本市場で認知を高めるためにはどのような活動が有効でしょうか。

河南氏:
市場認知を形成するためには、複数のアプローチを組み合わせることが重要です。例えば、経営層との関係構築を目的としたCxOイベント、ユーザー同士の交流を促進するコミュニティ活動、展示会やカンファレンスなどのイベントマーケティングなどです。重要なのは、顧客のエンゲージメント段階に応じて適切なチャネルを選択することです。日本市場ではユーザーコミュニティや口コミの影響力も大きく、継続的な認知活動が信頼形成につながる場合があります。認知形成に唯一の正解となる施策はない、というのが私の考えです。一方、海外ベンダーでよくある失敗例として「What’s new?」を追求しすぎるため、活動を行って短期的な結果がでないのでまた次に違った活動を行って…としている間に、継続性がなく顧客が不安や疑問を抱き、関心を失ってしまう場合もあります。重要なのは、お客様の購買プロセスが年間ベースになっているのと同様に、年間サイクルに沿った継続的な活動を顧客に認知してもらうことです。


パートナーと信頼形成

― 日本市場ではパートナーの存在はどの程度重要なのでしょうか。

河南氏:
日本市場では、パートナーは単なる販売チャネルではなく、顧客の信頼形成において重要な役割を果たします。多くのIT導入プロジェクトでは、製品ベンダーだけでなくSI企業やITコンサルティング企業が関与し、顧客企業はこれらのパートナーとの関係を通じて新しいテクノロジーを評価することが少なくありません。
特に日本企業では、既に信頼関係のあるSI企業やコンサルティング企業が技術評価や導入支援を担うことで、新しい製品に対する安心感が生まれます。
また、海外ベンダーが日本市場に参入する際には、購買プロセスの与信条件やドル建て取引などが障壁になる場合もあります。こうした課題に対して国内パートナーが契約主体やサポート窓口となることで、顧客企業にとっての導入ハードルを下げることができます。
つまり、日本市場においてパートナーは顧客アクセスを広げるだけでなく、信頼構築(Trust Architecture)を支える重要な役割を担っています。


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日本法人の意味

― 日本市場では日本法人の存在はどの程度重要なのでしょうか。

河南氏:
日本企業の中には、日本法人が存在することを信頼性の一つの指標として捉えるケースがあります。特に長期的なシステム導入では、国内サポート体制や契約の安定性が重要になります。一方で、日本法人を設立するタイミングは企業によって異なります。当面日本法人を設立せずに日本支社として日本でのビジネスの可能性を模索したり、日本への参入時はEORのようなサービスを活用して一定の市場検証を進めた後に合同会社として法人設立を行うケースもあれば、パートナー企業や投資家と協力して早期に株式会社として法人化する場合もあります。日本法人化はお客様からの信頼以外に、従業員の社会保険の観点からも、できるだけ早めに検討が必要です。GTM戦略の一環として検討することが重要になります。

資料ダウンロード

日本企業が新しいベンダーを採用する際の重要な判断基準である「信頼」の構築方法や、
具体的なパートナー戦略については、ホワイトペーパー 
「日本市場では「信頼」がGTMの起点になる -ローカリゼーションとパートナー戦略」
詳しく解説しています。

・なぜ日本企業はベンダー採用に慎重なのか(日本市場における信頼の構造)
・単なる「翻訳」ではない、顧客体験全体を適合させるローカリゼーションの本質
・機能ではなく「成果(ユースケース)」で語る導入事例の役割
・単なる販売チャネルではない、パートナーエコシステムを通じた信頼形成

製品の価値提案にとどまらず、日本の顧客が安心して導入できる環境(Trust Architecture)を
構築するための実践的なノウハウをお届けします。
ぜひWPをダウンロードください。

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